ラーソン・ジュールLarson Juhl
素材と技法Materials and Techniques
モールディングとは
日本の工房では海外で作られた(※)モールディングを在庫し、1点1点注文されたサイズにカットして額縁の形に組み立てる、カスタムフレーム(特注オーダーフレーム)製造を行っています。
フィンガージョイント
丸太からまるごと切って一本の木材をとったのではなく、実は短く加工された角材をたくさん組み合わせて一本の木材を構成しています。両端に細かな切り込みを入れた30cmくらいの長さの角材を3m程の長さに繋げます。まるでおもちゃの線路を繋げるようなこの加工は、接合部の形状からフィンガージョイントと呼ばれます。フシ穴など、木材の使えない部分を取り除きながら接いでいくことで、品質的に安定し、無駄な廃材をほとんど出すことなく作ることができます。
額ができるまでMaking of Items
850種類ものモールディングで、作品のイメージに幅広く対応できることがラーソンジュールの強みです。よく見ると超有名アニメのシーンを切り取ったミニチュアの額装。工房スタッフが趣味で製作したそうです。
営業部長の栗原さん(左)、営業の笹木さん(中央)企画部の座間さんと副工房長の増田さん、センター長の宮澤さんに、製造の流れの順番に工房をガイドしていただきます。
モールディングの在庫・管理
工房に入るとすぐに、モールディングの在庫場。
約2~3mもの長さのある部材の為、直立で保管されています。
モールディングには全て品番が割り振られています。このフレームの切れ端が、その品番のモールディングのデザインを表しています。
次の作業場へ移動するために使われるキャリーです。
ラーソンジュールの工房では様々な形状のモールディングが使われていますが、油絵用・水彩用という風な分類の仕方はしていません。
モールディングのカット
モールディングをカットしていきます。
端の断面が斜めになっているのがわかります。
フレームの断面をくっつけることでピタッと合うようになっています。
モールディングをカットする機械です。
長い棒状の素材なので、横から横へ滑らせながらカットします。
機械に設置されているモニターからは
加工されているモールディングの種類が表示されています。
モールディングの組み立て作業
次はカットしたモールディングを組立てていきます。
まずは断面にボンドを塗ります。
次にこのようなV字型の機械に、2本のフレームを合わせます。フレーム角が上から押さえられた後、ガチャンという音とともに、フレームが固定されました。フレームサイズが大きくなると、フラフープみたいな状態で作業していきます。
フレームが接着されるのは、機械の台の下からV型の釘が打ち込まれるからです。
V型の釘はこのように、直角になっています。
V型の釘を打ち込んで固定した後の、フレーム裏面。
固定した後、ボンドのはみ出しをチェックしてコーナーのとがりに少しヤスリがけをします。
フレームの仕上げの確認
組んだフレームはもう一度人の目でしっかりと確認し、例えば色が欠けているところなど細かい部分を補彩していきます。
特に組んだばかりのフレームの角の部分は、色が無い部分が見えてることがあるので、よく見て補修していきます。これはマーカーで修正していますね。
裏板・アクリル板の加工
フレームの他にも、アクリル板や裏板などの部材も全て、この工房で行います。この機械が、平たい部材をカットするものです。アクリルでも裏板でも平たい物はなんでも切ります。
カットする機械の後ろには、部材が保管されています。アクリル板・裏板や、額内部の隙間を埋めるためのスチレンボードや、中性合紙なんかもあります。
これは裏板。
アクリル板と裏板、セットする額ごとに加工指示書で分けて置いてあります。この後、組み立てたフレームと合流して、一組の額になっていくという形になります。
箱も作る
ラーソンジュールでは額を入れる箱までも、ここで作成されています。外注にしてしまうとその分納期がかかってしまうためです。箱を組み立てるために折り目をつけます。折り目は全て機械でつけます。
切込みを入れた角にグルーガンで糊をつけ、洗濯バサミで固定します。これで額を入れる箱が完成です。
裏板・アクリル板・外箱が完成すると、加工指示書と一緒に一つにまとめられます。
フレームの仕上げ
フレームや裏板は木地なので、その裏側は木目が丸見えです。なのでお客様のご指定で、緑色のテープを裏側に張り込みます。このことを「裏仕上げ」と呼びます。額の裏側も美しく仕上げる意味もありますが、木のアクが出てきても後ろに染み出すことが無いようにするためです。裏板も基本ベニヤ板を使っていて、同じくアクが出ることがありますので、片面だけシートが貼られています。これを「青紙ベニヤ」と呼んでいます。
トンボ(作品や裏板が落ちないように止める金具)や紐を通す吊金具を取り付けて完成です。
メジャーや定規で、取り付ける位置を測っています。
以上の工程を経た額は、裏板やアクリル・外箱と対面し、
ようやく一つの商品として完成します。
入荷されたモールディングはまず品質チェックをされる方がお一人いらっしゃいます。
工房の入り口に立ち、フレームの見本(マスターサンプル)を現物を見比べながら、一本一本チェックするのです。あまりにも風合いが違えば、どういった差があるのかを伝えて、すぐに海外に送り直すそうです。
モールディングチェック担当の方が必ず全て見て判断をされます。これもクオリティUPのためです。
大切なものを永く保存するために
額装用のマット。100種類以上もの色展開があり、弊社でもよく使われます。色がたくさんあるだけではなく、作品を永続的に良い状態に保つ素材が使われています。100%バージンアルファセルロース(作品に悪影響を与える物質を除いたパルプ)が原料で、空気中にはびこる悪性ガスを吸着し、作品を守ります。
永く大切に保存する物は作品だけでなく、資料や本・立体物など実に様々な形態であることも多くあります。そういった様々な要望に応えるため、工房で作られているものに保存箱・ケースをフルオーダーで制作されています。
箱の大きさ、形状など様々な種類のオーダーがあります。まずはお客様とデザインを相談し、形を決め図面を作成します。
箱を作る機械は直線・円・曲線などを刃を入れ替えながらスイスイカットしていきます。見ていて気持ちいいほどです。
カットしたものは手作業で組み立てられていきます。これは箱状のものですが、ほかにも引き出しのような形や、封筒など平らなものも作成できます。こういった保存箱などは、図書館や資料館などに引き合いが多いとのこと。国内で組み立てられるという点も強みです。
取材中、以前弊社で納品していただいた商品のことについて相談したところ、工房の皆さんが集まってきて、その場で様々な意見と対応策が言い交わされました。このように様々な場面で柔軟に対応されているところに、ラーソンジュールの真摯さを感じました。
このように製造過程でどうしても様々な端材が出てきます。紙やマット類などは基本的に産廃に出してリサイクル。モールディングの余りは小さくカットして組み立て、ミニ額として販売するなど、工夫されています